いつかみた夢の記録

作り笑顔が素敵な爽やか社畜のはにかみ系ブログです。

ビッグなあいつを倒し、成長を感じた2016年夏

初めてこの店を見たのは、そう、夏の暑い日のお昼時だった。

 

店の前を通ったとき、ふぇっ!?ってなった。俺の人生でこれまで、ふぇっ!?なる感嘆詞を使ったことがあろうか、いやない。これが初めての、ふぇっ!?、である。

 

俺の目はその店に釘付けになり、その店名から想起されたのは、大きな『かわうそくん』。大きなかわうそくんがそそり立ち、汗をかきながら熱い蕎麦を頬張っている姿。それを見上げる俺。夏。2014年の夏、真夏の暑いお昼時。ランチ難民の俺。

 

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俺は、自分の中で分かっていた。これは幻だ。夏の日の幻。幻影。蜃気楼、陽炎。

 

炎天下の中、さ迷っていた俺は、熱でやられたのだ、頭を。これはいけないっ、と、自分の頬をぴしゃりと打ち、はて、俺は正気に戻ったのだった。

 

そこには、かわうそはいなかった。そこにあったのは蕎麦屋だ。

 

蕎麦屋の名前は、「大吉田」だった。今、振り返ると、「大吉田」というある種飛んでるネーミング、この、名作漫画・「伝染るんです」臭が、作者の吉田戦車の名前と結びつき、かわうそくんが想起されてあのであろう。きっとそうさ。

 

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「大吉田」、どうやら界隈では有名なそば屋らしい。どデカいかき揚げが名物のようだ。そば好きの俺が入らない理由はないだろう。でも、その時、俺は店に入らなかった。理由は良く分からないが、きっと『今の俺では勝てない。』そう直感したのだ。そう囁いたのだ、俺の中のゴーストが。

 

 

それから時は経ち、今日偶然、この店の前を通った。

『待っていたぞこの時を。』

店を見ると、俺はそう一人ごち、颯爽と、「大吉田」の暖簾をくぐったのである。あれから俺はずいぶんと成長したはずだ、臆することはない。上司からのパワハラ、部下からの突き上げ、同僚からのディスリ、自棄酒、現実逃避、あらゆる経験が俺の成長の源となっている今、今ならやれる!「大吉田」のかき揚げ何ぼのもんじゃい!

 

頼むはもちろん、大吉田そば...大吉田大盛り、である。この、上から読んでも下から読んでも大吉田大盛りになりそうでならない感。

 

...いや、待てよ、大吉田そばの上があるようじゃないか、てっぺん目指さないのはいかがなものか?2番じゃダメなんです。ここは、この店の最高峰、超大吉田そばでいこう。超大吉田大盛り!

 

俺は店に入ると、人差し指をまっすぐに天に指し、高らかに声を上げた。

「おばちゃん!超大吉田大盛り一杯ね!」

ハイヨー、食券買ってね~というオジサンの声が聞こえたので、渋々それに従う。これがアウェーなのか。出鼻をくじかれた。

 

お店の中に入ると、意外にもそこは普通の蕎麦屋であった。液晶テレビも備え付けてあり、温泉番組が流されている。温泉に入る女性タレントの胸元をガン見しながらしばし待つ。きもちいーっと、コメントする女性タレントの声を聴き、カウンターから身を乗り出そうとしたその刹那、お待ちどうサマー、という店員のオジサンの声。

 

虚を突かれた俺は、巨乳に興味はありませんよといった態を出すために、心を落ち着かせようとした。そして、「それ」が目に飛び込んできた。

 

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これが、「超大吉田大盛り」である。

でかすぎ!!!!!このかき揚げ!!!!!でかすぎ!!!!!

 

マジか、こいつと勝負するのか...一瞬あきらめにも似た気持ちが湧き出てきたが、心の平静を取り戻すため、再度、TVの女性タレントの胸元を凝視したわけである。決して、助平な気持ちではない。心の基準点に戻る為である。これにより何とか、心を整え、再度、目の前の蕎麦の上に鎮座するこの超大な「それ」を凝視した。

 

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……

……戦いは15分ほどだっただろうか。超大のものは、大となり、中となり...

 

...ま、まだあるのか...と、心が折れそうになる。しかし、やつの尻が汁に使っている部分から、バラバラになっていくのが見えた。超大、大だった時は、かぶりつくたびに、口の中を痛め(ぶっちゃけ血が出た)、しかし、いまや、中、となったそれは、汁にひたり、バラバラになり、油も溶け出し、やわらかいものに姿を変えていた。

 

勝機を見た!俺は、残る硬い部分のそれも、汁に浸し、小さく柔らかくし...すこしずつ少しずつ、相手のパワーを奪っていった。

 

そして... そして... ついに、平らげたのである。

完食...いや...完勝である!

 

ほんの昔までは「大吉田」という名前に負けていた俺、しかしいまや、「大吉田」を超える「超大吉田」すら倒した俺。

 

俺は、俺自身の成長を振り返る。上司からのパワハラ、部下からの...(略)

 

俺はひとしきり感慨にふけると、手を合わせ、相手の健闘を称えた。

「ごちそうさま」

 

そういって店を出ようとすると、店員さんが、

「行ってらっしゃい」

 

と声をかけてくれた。次のステップへ進み、ビッグなボーイになれよ、そう言ってくれているに違いない。

 

TV番組は、フィナーレの花火が上がっていた。

 

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(完)

 

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